絹紐。
綾色の紐。
ときに藤棚の色に惹かれ
またはただの白に焦がれ
邪魔な髪を
ただまとめるのに必要な綾紐
その綾紐にすらも
纏いつく蛇を認めた日から
手鏡も
耳に沿わせた天然石も
およそ他人に譲れるようなものではなくなって
いつかは気づく
いつしかは自覚する
纏いつくデザインさえ罠に似ていると
春天に放していいほど
蛇が牙なくするまでは
纏われつかれるしかない日々の苦悩は
綾のものであり
どこかの黒髪が「龍の牙を抜くまでの物語」
そして幾年後
日なたの窓辺に残ったのは「ふたたび綾紐」譲らなくていいもの
どこかの幼児に渡す必要もないもの
なぜなら
鳥籠のいらない存在に
凝った髪型を強いた紐は
やがて不要になるから