20年来の銀髪に捧ぐー下書きSS(草案)「その猫の名は…」

「ああ、甥どの。このたびは性格の良い子猫をありがとう」
「こちらこそ。わざわざ南まで、すまない。ありがたく思う」

眠たげな、という様子を取り繕ってくださる必要はもうないのに、と苦笑しつつ

すこやかそうな毛並み。ちゃんと太陽に適応している温度。
物怖じしそうにない瞳。きょと、と形容すればいいのか。

特に鳴きもせず、すらっと北里主人の傍らにある様子に
わざわざおよびたてするまでも無かった、と詫びた。

そう、猫はこういう表情が一番、と絵に描いたような、どんぐり瞳に
こみあげる微笑が街と街の一大事より、よほどなごむ。

「すこやかに育んでくださっていて嬉しく思う。心から感謝を」
安堵の吐息が無意識。
騒ぐような性格ではないからと選んだが、どこか少し心配していたのは確か。

やさしく撫でて育てたら、きっと今より、やわらかな毛並みに育つはず、と、紹介したとき
いちばん攻撃的ではない性根の子を選んだはず、と、思い返して微笑する。

笑まなければ、と、引き結ぶ笑みと違って。
自然に笑顔が込み上げるのは
預けた子の生育が、とにかく気になっていたからに違いない。安堵した。そればかり。

「杞憂だっただろう。なんとしても様子を見なければ、とは。おまえが母親猫か」
「甥どのの方が、まだまだ愛着も未練もありそうな気もしたけれど………?」
「すまない。表情に出ているだろうか」

面影を探してしまうのは、いちばん小さい時を過ごしていたから。

「杞憂だった。様子が見れるついでに、北の様子を聞ければと…..この子は同席でも?」

「驚いた。いつの間に寂しがり、とは感じるけれど。甥どのにとって、そちら銀色の龍以外にも
 複数の生き物が必要とは予想外だ」

相変わらず、おっとり上品な様子でもこちらがひやっとする発言に苦笑。・
そう、ひやりとさせられるのは空気感ではなく言葉なのだと。

(添い寝に最適なのはきっと子猫)
意外にあっさりと付き従う青年にも受け入れられたことを懐かしく思う

「幸せそうな顔で、安心した」
「西の原産だと性根がいい。勉強になるだろう。北側の野良猫など、あてにならない」
「『白龍』、あてつけが過ぎると思う。こちらは性格が柔和な子猫に行き合っただけで幸運だった」


「……うちからの子猫もお礼に、と思っていたのだけれど、もう読まれたかな?」


実は不思議な瞳の子が、先日、屋敷に迷い込んでね。と
嬉しそうに籠から、ひょいっと新しいねこを取りだす北里主人に、


……すでに厄介ごとの気配? と身構える。そんな春先。
届けて預けておいた子と真逆の感覚がする、と、不意に緊張感を覚えた。


「北側原産に、おまえは懲りていただろう」
「……..実を言えば」
「甥どのらしいね。ひとを選ぶし、猫も選ぶし」

困った。猫の毛並みや顔立ちに、いろいろと文句をつける性質ではないと
思い込んでいたのに。……違っただろうか。相容れない。

「北里主人どのが、特に、目を惹かれた猫なんだろうか」

ひょい、と眉を上げた隣人の、おもしろがる笑み。

「おまえが気に入れば、という意味に解釈すればいいだろう」
「当たり。無理に交換会するつもりはないから………そんなに心配そうな顔はおよしよ」


こちらに猫の選り好みがあるらしい、と手に取るよう
わかられている気がしてきた。もしや、一番幼いのは俺だろうかと戸惑う。
どうにも
言葉に詰まるのは、目の前にいる成猫に対する違和感のせい。

「この子は……俺が、たぶん、何を考えているか読めない子なのだと思う。ずっと」
「難しく考えないで」

よし、おいで、と、案外あっさりと北里当代が引き受けてくれて安堵する。


「?!」
ふと途切れた意識は、誰のせい


(冬眠どの……俺に、何か盛るのは、もう何度目?)


まずくちびるに乗せそうになる難詰の言葉を、かろうじて堪えた。
不可思議な猫の双眸にではなく、佇まいに強烈な違和感。

難癖だろうか。先ほどの茶の香りにも、そこまで異質な感覚はなく。ではそれほど過労?と
およそ、慣れたはずの陽の香りがしているのに幾つかの可能性を精査する。

「すま、ない……..成猫には、慣れていないのかもしれない。先に休んでいても?」

あり得るのだろうか。
籠から現れた成猫1匹に、こうまで体調が揺らいでいる、という可能性。

「甥殿。無理をせず」

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