「花路。あんず事変があっただろう。熱は」
「わりあいすぐに下がった。杏に盛られるとは、思っていなかった…….が、手ぬるいのだろう」
腐っても杏、で気づくべき。
「杏が腐るという予言があったと」
「そういうことになる。他に読み落としは」
「桃のうつくしい里がデマ。つまり蜂大人情報のあらかたは、デマ」
「花路。花の名を冠しているから蜂に刺される。改名は」
「親から、預かった名の飛蘭花を変えようと思ったことは、まだ無いが……?
「刺される、を経験し通しなのに懲りないな」
「花と付くから刺されると?」
花路が「花の通りみち」
心の拠り所であった歳月が長かっただけに無意識、まなざしが尖った。
「あの草郎どの、別名があったほうがいい」
「唐突に、なんだ」
おまえの名の話をしている、と呆れる声音に
すまないと一言置いて、
「通名と思う。草と郎。 つまりは ”花の名にあたわず” ぐらいの揶揄では、無いのか」
蘭には名を連ねない家の出、
そして男児。そういう意味合いを当てつけただけ、それなら通称でとどまれば十分かと
「何か、あったか。北里主人屋敷で」
「甘い香りは、おそらく…….冬眠どのの館の室内好みであるだけではなく」
あちらの存在も、花路に迎えても構わないのに。







