龍玉を、迎えに。
まだ明るくはない、と、うっすらと動かない指先を放り出したまま
いくぶん、遠い知覚
その台詞を見かけた、意識と
やけに寒さを覚える心地の中
……..刃を避けきれて、いない?
それでは、あんたらしくは、
「君らしいよ」
どこか遠くに笑む声を、聴く。
「君らしいよ。甥どの。避けきれない、とか。逃げ切らないだとか。……ほんとうに、よく、似ておいで」
気づいていなかったかな
君の仕草は時々、すでに、あちらの「龍」に似ておいで。
あらがうが信条と聞いていた割に
運命には抗う、が生まれたときからの信条なのだろうけれど
いちばん肝心なとき、
「刃を弱めるのが兄上の血かな」
もともと「救いだす」以外に、武術も憲法も心得ていないとか。
兄上ゆずりというより
もう、あちらの龍ゆずりなの?
返らない答えを当然のように、囁きばかり、落ちてくる。
瞳は、開くのだろうか。
…………..腕は、上がるのだろうか。
それでも
意外に穏やかな心の視界のなか
この腕が上がらないという声に、内心、目をみはる。
(マクシ、ミリアン……?)
「いいよ。すべての綾紐は「白龍」どのから引き継がれていた。
もとより、わたしに触れてほしくない品まで含んでいるのだろうから」
草郎に託したりすることは、
やめておいてあげる。想いが多すぎるから
低い声音が
いつか冬の眠り自体の幕引きを、笑みに宿しているようで
読みきれない。
かえってかまわないと……?
「草郎を呼んでくる。ちゃんと朝にお茶くらいは飲んで」
視力は、戻るよ。
あなたがどこの「龍花」であるか、あなた自身で明確である限り。
おやすみすら聞かずに。
開かない瞼にあらがい、一瞬、見たことのない眼差しを視た、気が、した。
西の、冬の空。
西にいる時にしか感じられなかった、微風
見たことのない血染め。 懐かしい西里の香り、
聞いたことのまだない台詞
「鳥ではなくても、歩んでおいで」
歩けるよ。あなたは。もう、いつかの軽い鳥の羽音は忘れておいで。
姿の見えない鳥を探しても当てにならない
羽のうるわしさを誇示する鳥に、最初から似ていないでしょう。
鳥が飛ぶ、そのざわつきに心寄せなくても
副長せず三日でもあるいていられる「花の束ねとしての必要」とやらも結局のところ
他人には、あなたは任せられないのではないの。
任せる、は、時期はずれでしょう
四市に「触れ」もいずれは出るのだろうからね、と
どこか、幼児に向けた噛んで含める、そのはやさ
どこか眠たげな穏やかな言葉の、意味を
すべては拾いきれないまま
………感謝する
揺れもしない寝台、 心ばかり、ずいぶんと自由に。
風の、匂い。
西の風の匂いが届く
呼吸だけを、保って。
「良いよ、甥殿。願いとやらにまっすぐに歩めれば」
きっと
まだ歩くのだろう、と。
春の花のような。お子。
まるで春の花が咲いているような。その季節だけを讃えているような。
それ意外に無心、意外に童心という意味じゃない?
「…………わたしたちとは違って童子のよう」
がんぜない幼児
あなたは春に咲く花のような、と謳われたことはなかった?
春に揺れた、花枝のような、あどけない無心を
音もない呼吸
(天にかえされながら)
(還されながら)
ざ、と揺れる新緑。
まなざしを眩しげに細める刹那、いくつかの若葉が落ちる。
歩む人影に気づく
制止しなければ。
(四市が灰になる前に)
(たとえば北里が無風景になる、前に)
………….まだ、銀灰を止めなければ、ならない。







