ひとしずく、ひとしずくずつ。

【真夜中 猫のひとりごと】

コップの水があふれて
空になったら

ひとしずくずつ

満たすしかない。

濾過の雫、
雪解け水。一滴ずつ、集めるしかない。

奇跡のような名演を、アコースティックばかりで
耳から随分たくさん採ることができたのは
ある意味、音大生時代の特権だったのかもしれません。もう随分と前のことです。
あの時の私の視界に、多分ノイズはなかった。

名盤を手に取ることが無制限に許されていた日々には、
美しくない音というものが、そもそも、なかった。

欲しくない音は、最初の30秒も聞かずに棚に戻していた。
合わない、と決める直感は、理屈ではなかった。
聴いた。聴いて聴いて聴きまくって、一枚だけを決めて、あとの時間は、ずっと弾いていた。学生時代。
アコースティックしか聴かなかった。

あの頃も
葛藤と無縁ではなかったのだけれども
とにかく音探しの時間は、無限に(?)あった、学生時代が遠いです。

ゆきつもどる思考の隙間、同じことばかり過ぎります。

ひとしずくずつ、満たしたい。
そのことばかり。

かつて、じゃない。
今コップに残らないのなら
新しい水を与えるしかないのだから。

アガジュベベ。
私が生きるための水は、<今の自分>が、求めるもの以外にない。

砂漠の緑のようだった頃の、つまり常緑樹のようだった、羽鳥の佇まいを
思い返せない季節は

つい、眼差しが、翳ります。

無理せず際限なく水を与え合うことができない関係なら
適度な距離を置けばいいとわたしも思います。

もっと一滴ずつ

”本当に求めている音へ”

森に、わけいることばかり考えてしまう9月です。

奇しくも同じ夜
「音は脳の構造をさえ変える」という、記事を携帯で読みました。
配信記事、たとえ偶然でも、
時には、ふっと呼吸を詰めてしまう情報に、行き当たることもあるものですね。

耳にする音が
人の脳の神経系統を組み替えてゆく。そういう主張でした。

同意せずにいられなかった。
それは、ある意味、とても正しいと感じた。
直接的な作用に、ぞっとさえ、する。

視力も思考力も性格さえも。
摂取する音で変わってしまう。脳は恒常的に一定の形で活動なんて、していない。
それは、私のリアルな実感と完全に一致している節でした。

耳にするもので変わってしまう。

ああ、選ばなければならないのだ、と。
水質は。他ならない自分で、選ばなければならない。

勧められた水だから
自分に合うわけでもない。

ノイズの有用性と有害性に対する記事に
慄然としたのは、ほぼ同じタイミングで。

マイナス方向に脳を組み替える音、というものの存在を
私はおそらく…一定期間、ずっと味わっていたと思うのです。結構な期間を。
だからこそ。

逆を選びたい。

逆を、選びたい。
幸福な音を選びたいと願う。

鳥猫は

”ひとしずく”を。
探す9月を、過ごしています。

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